広告では成しえないことをメディアで。メディアの可能性を信じて、戦略設計からコンテンツ開発までを一気通貫で行う。

杉岡 秀一

Hidekazu Sugioka
Index
1.自己紹介をしてください
2.現在統括している事業の内容を教えてください
3.マネジメントスタイルを教えてください
4.アンドデジタルの社風について教えてください
5.今後挑戦してみたいことを教えてください
 
 
 
 
1.自己紹介をしてください

マス広告、ネット広告を経て、メディア企業の経営者へ

――――
 
荻原:それではまず、杉岡さんの役職と仕事内容を教えてください。
杉岡:2022年4月からメディアエンジン社(以下、ME)の代表取締役社長を務めており、会社の事業全体を統括しています。MEの展開するサービスは、企業のオウンドメディア(※)の構築から運営までの支援をする「コンテンツマーケティング事業」と、メディアの運営支援を行う「メディア事業」の大きく二つです。
※オウンドメディア:自社で保有するメディア。ユーザーや消費者向けに独自の情報を発信するWebサイトのこと。
 
荻原:現在に至るまでのキャリアについて教えてください。
杉岡:2007年に新卒で総合広告代理店に入社し、営業として顧客の広告戦略の立案やマーケティング支援に携わってきました。昔からモノが売れる仕組みに興味があって広告業界に飛び込んだのですが、顧客のマーケティング支援に従事する中で、インターネット広告の可能性を感じるようになったんです。それからデジタルの知見を深めたいと考えて、2010年に株式会社オプトに入社。同社で大手広告主のデジタルマーケティングの戦略立案に従事した後、2012年に当時子会社だったソウルドアウト株式会社へ出向・転籍しました。
 
荻原::ソウルドアウトではどのようなキャリアを積んできたのですか?
杉岡:もともとオプトの大阪支社にいたこともあり、出向後はソウルドアウト大阪営業所の立上げと拡大に従事しました。転籍して関西営業部の部長として大阪、京都、兵庫の3拠点を管轄した後、2017年に東京本社に転勤し、EC支援部部長、2018年7月に西日本統括本部長を経て、2020年メディアエンジン株式会社に取締役として出向しました。そこからメディア事業の統括・推進と新規事業開発に取り組んでいたのですが、2022年4月に創業者が社長を退任することになり、代表交代という形で現役職に至ります。
 
荻原:どういった経緯でメディアエンジンへの参画を決めたのですか?
杉岡:スタートアップ企業でこれまでの経験・知見を活かして組織を大きくしていくことに挑戦したいと思い、MEに参画することを決めました。
今まで営業組織の管理職として大阪支社の立上げ・拡大や、西日本の統括などを経験し、たくさんの成長機会をいただきました。今度は自分の経験を活かし、経営者として組織や事業を大きくしてみたいと思うようになっていたところ、MEへの出向の話をもらいました。
MEはクリエイターが主体の会社で、当時は営業メンバーも少なく、営業力の強化が課題でした。僕自身ずっと営業として組織の拡大に携わってきたため、自分の価値を発揮していけるのではないかと思いました。ソウルドアウトに出向したときのように、新たな仲間と共にまた会社を大きくする。会社として、そして個人として2度目の成長実感を得られる予感にワクワクしたのを覚えています。
 
荻原:実際にメディアエンジンに入ってみてどうでしたか?
杉岡:良くも悪くも整っていなかったですね!(笑) まだまだこれから整備していくべきところはあるのですが、その反面、自分たち次第でいくらでも作っていけるフェーズだと思っています。ないものだらけの中で、どうやって成功させるのかを考えていく必要がありますね。
そんな環境もあってなのか、MEは主体的に動いているメンバーが多いです。「どうすれば目的を達成できるか」を、自分たちが提供できる範囲を超えて、思考しながらやっているのはすごくいいなと思いました。
 
荻原:代表交代してからはどうですか?
杉岡:正直、創業者からの引継ぎなので不安と緊張はありました。どうしても、これまでと比較されてしまうものなので。その反面、自分やメンバーに対する期待もありますね。
これからは会社の代表として、自分の意思決定によって事業がうまくいくか否かが決まっていくわけです。改めて、これまでと違うメディアエンジンとして上手くやっていける可能性もあると思っています。変えるところと変えないところを、メンバーと一緒になって作っていけることにワクワクしていますね。
 
 
2.現在統括している事業の内容を教えてください

経験と知識が豊富な専門チームと事業を推進

――――
 
荻原:MEの属する「コンテンツマーケティング市場」は、どのくらいの市場規模がありますか?
杉岡:「コンテンツマーケティング」と一口に言っても、SEO(※1)やアフィリエイト(※2)、SNSなど、様々なマーケティングが合わさった手法なので、どのようにセグメントするかによって変わります。SEOに限定すると、およそ500億円の市場規模だと言われています。アフィリエイトであれば3,500億円くらいの市場規模ですね。
※1 SEO(Search Engine Optimization):検索エンジン最適化。検索エンジンからサイトに訪れる人を増やすこと。
※2 アフィリエイト:成果報酬型の広告。第三者に商品の宣伝や販促をしてもらい、実際に販売につながった場合に、そのきっかけとなった紹介に対して報酬を支払う仕組み。
 
荻原:市場は今後も伸びると考えていますか?
杉岡:現状は緩やかに伸びていますが、徐々に縮小していくと予想しています。「検索」という行動をするユーザーが少なくなってきていると思うんですよね。「タグる」という言葉が出てきたり、InstagramからUberEatsを頼んだり。何かを探したいとき、Yahoo!やGoogleなどの検索エンジンを使うのではなく、SNSを使って調べるようになってきています。コンテンツの形式も、テキストコンテンツから、動画やボイスコンテンツなど様々なフォーマットに変わっていってますしね。
 
荻原:確かに、5Gの普及も追い風となり、動画コンテンツの利用がかなり広まってきていますね。「メディア事業」では、どういったお客様を支援しているのですか?
杉岡:購入してほしい商品・サービスがある企業が、メインのお客様ですね。コンテンツマーケティングにはいくつか目的があり、例えば、新聞やテレビなどを専門にしているマス広告代理店などの場合、ユーザーとの顧客エンゲージ(※)形成のためにメディアを作ることが多いんですよね。一方で僕らは、購入してほしい商品・サービスはあるけれど、マス広告やWeb広告など広告費を支払って掲載する従来型の広告だけだとこれ以上効果が見込めないお客様や、消費型の広告ではなく資産型の広告展開を検討されているお客様をご支援させていただいています。最近では、無形商材を持つお客様も増えてきていますね。
※顧客エンゲージ:商品やサービスを提供する企業と顧客との間の信頼関係。顧客エンゲージメントの形成は優良顧客を増やすことに繋がり、企業の売り上げや収益をアップさせることにも繋がる。
 
荻原:会社の強みを教えてください。
杉岡:大きく分けて二点あると思っています。一点目は、戦略設計からコンテンツ制作、メディアの収益化、効果測定までを一気通貫でご支援できる体制があること。コンテンツマーケティングの会社は星の数ほどあるんですが、実はバリューチェーンを統合してサービスを展開できる会社は少ないんですよね。一方MEは、メディアの立ち上げから拡大、収益化までの経験があるメンバーが多く、戦略設計からコンテンツ制作、その後の収益化までを一貫して担うことができます。メディアの立ち上げに関しては「すべてお任せしたい」と思っている企業様がほとんどなので、これは喜んでいただいているポイントの一つですね。
 
荻原:では、二点目の強みは何でしょうか?
杉岡:二点目は、コンテンツマーケティングに役立つツールを自社開発していること。MEでは3000人のクリエイター(ライターや編集者、監修者など)ネットワークがあります。単にネットワークするだけではなく、クリエイターの皆様がより良いコンテンツを統計的に制作できるよう、ツールを提供しています。
 
 
3.マネジメントスタイルを教えてください

個性を活かし協働する、理想のチームワークを築きたい

――――
 
荻原:メンバーを褒めて育てるタイプですか?叱って育てるタイプですか?
杉岡:悩ましいですね(笑) 正直にいうと、どちらでもないです。叱ることはあまりしないけど、めちゃくちゃ褒めることもしないんです。特に、「叱る」のはあまり本人の心に刺さらないと思ってるんですよね。自分の経験上、悪いことをしたときに叱ってほしいという想いがあるんです。叱られると本人の中で気持ちが楽になるじゃないですか。想定通りちゃんと叱られたって。なので、自分で悪いことしたと思って反省しているときに叱られないと逆に凹んじゃうんですよね、僕の場合は(笑) これは人によって様々だと思うので、メンバーの性格や状況に合わせて臨機応変に対応するようにしています。
 
荻原:あまり褒めないとのことですが、メンバーがよい行動をしたときはどうしているんですか?
杉岡:自分からではなく、ナナメの関係の他の人に伝えることで褒めてもらっていますね。仕事は満足したら終わる気がしていて、成長を止めない意味でも僕自身が直接褒めることはほとんどないです。自分がすごいと思っている人とか影響力のある人が「あの人すごいよ」って言ってたら、その人をすごいと思いやすいじゃないですか。結局誰が言っているかが重要だと思うんです。そうやって周りに評判を広めていくように動いています。その人の自信にもつながると思うので。
 
荻原:MEはトップダウンでしょうか?ボトムアップでしょうか?
杉岡:領域によりますね。自分の得意領域だったらトップダウンですし、そうでない領域に関してはボトムアップを意識しています。ボトムアップであれば、自分のところまで上がってくる途中で、トップダウンのマネジメントもできる人を間に置くようにしています。僕がゴリゴリ推し進めるというよりは、得意な人に頼ることを大事にしているので。その道の専門家がやるのが一番質も成果も高まると思うし、その人がやりやすい環境を作るのが自分の役割だと思っています。
 
荻原:MEでの仕事の進め方はチームワークですか?それとも個人主義ですか?
杉岡:基本はチームワークです。ただ、ある程度個人主義も許した方がいいと思っています。なぜかというと、高い属人性を発揮したものを仕組み化していくのがベストだと思っているからです。例えば、平均的な成果が上がるやり方で仕組み化するより、トップディレクター、トップ営業のやり方をフレームにして展開した方がいい成果が上がりそうですよね。チームワーク一辺倒でいくと新しいものが生まれにくいし、個性を殺しかねないと思っています。属人性を極めたものをチームに落としていくのが理想ですね。
 
荻原:杉岡さん自身は、どちらの働き方が好きですか?
杉岡:圧倒的にチームワークの方が好きです。結局、自分1人でできることは限られてるじゃないですか。同じ志を持った人たちが集まってそれぞれの強みを活かして成果をあげていくのが会社なのかなと思います。基本は周りと協力しながら、できないところを補い合いながら1人ではできないことを成し遂げていくのが好きですね。
とはいえ、チームワークを意識しすぎて個性を殺さないようにしたいです。規律を保つためにルールを守るのは確かに大事なんですけど、行動に対してはいつでもルールに疑いを持ってもいいと思ってます。属人化した仕事をしていく中で新しいルールを作っていくサイクルが回っていくのが理想だなと思います。
 
 
4.メディアエンジンの社風について教えてください

働き方・年次・年齢の垣根なく、大きなチャンスが与えられる会社

――――
 
荻原:会社の良いところを教えてください。
杉岡:任せる文化があるところです。入社年次や年齢にかかわらずメディアの責任者を任せたりしますし。人も少ない分「任せるしかない」という状況もあったりするのですが(笑) だからこそ、整った制度の中でやっていきたい人にはしんどいけど、自分でルール作ったり自分で裁量持って意思決定したい人にとっては、とても心地よい環境だと思います
 
荻原:改善点は何でしょうか?
杉岡:改善点はキリがないです(笑) 一緒に改善したいと思ってくれる人が増えると、僕としてはとても心強いですね。
前提として、本当に整っていないんです。もっとサービスも磨いていかないといけないですし、時代の流れ的にもトレンドの一歩先・半歩先のサービスを作らないといけない。オウンドメディアに関しても、今得意としている記事型コンテンツだけではなく、動画などのプラットフォームを活用していくなど、今後は会社としてのケイパビリティを拡充していきたいです。
組織面では、これまで創業者を中心とした文鎮型組織から、階層を作ってちゃんと組織をつくっていかないといけないフェーズにきています。より組織を大きくしていくためにも育成や細かい制度周りなど、守りの部分を強くする必要がありますね。
 
荻原: MEにはどのような人が多いですか?
杉岡:皆、ハードワーカーですね〜 仕事が好きで、仕事で成果を出すことが大好き。「自分の自己実現のために、会社をどう活用するか」と考える人が多いです。小さい会社なので、大手企業のように「会社にしがみつく」という概念を持った人は少ないと思います。
 
荻原:確かに、この間お話ししたとき皆さん目がキラキラしていましたね。
杉岡:ありがとうございます。あとは、かなり本質的で直球で物事を言う人が多いです。「良質な喧嘩をたくさんしよう」とよく言っていて。腹落ちしていないのに、納得したふりをして、あとで成果が出なかったときに「やっぱり違うと思っていた」と言うのは絶対に止めよう、と。なので、役職関係なく、納得できるまでその場で直球で議論をします。「正しいことを正しくやろう」という文化が強いですね。
 
荻原:今後、どんな組織にしていきたいですか?
杉岡:正社員だけでなくインターン生や業務委託が活躍できる組織にしたいです。時代の流れ的に、1社で長く勤めるということも減っていくと思うので。まさに、あらゆる雇用形態・職種の方が活躍するクリエイターネットワークの中で「想いが実を結ぶ」というミッションをMEで体現したいです。
そのためにも、外部の優秀な人たちと有機的に連携していきたいです。MEで仕事をするみんなが専門性と強みを活かしあって、事業が回っている状態が理想です。
 
 
5.今後挑戦してみたいことを教えてください

新たな事業を創出し、メディアのその先へ挑む。

――――
 
荻原:今後も事業を成長させるための打ち手はどう考えていますか?
杉岡:アライアンス(※)を結び協働していくメディアの種類をどれだけ拡張し、他の分野や領域へ水平展開できるかが、今後のポイントだと考えています。
※アライアンス:連合、同盟といった意味で、複数の企業(本文では、メディア)がそれぞれ経済的なメリットを得るための提携のこと。
 
荻原:今後挑戦したいことは何でしょうか?
杉岡:「メディアのその先」に挑戦していきたいですね。その1つとして、博報堂DYグループとの連携強化をしながら、自社メディアを作って事業会社化していくという方針があります。
特に今は時代の流れの中で注目されているDX、脱炭素、ウェルビーイング領域も視野に入れながら取り組んでいきたいと考えています。博報堂DYグループのアセットとメディアエンジンの強みを活かして、新たなソリューションや事業を創っていきたいですし、同じようなスタートアップでは成し得ないような事業会社へのチャレンジをしていきたいです。
そうすると、数年後はメディアの会社ではなくなっているかもしれませんね。

インタビューTOPに戻る>