Kouichi Takahashi

AI技術を用いた開発プロジェクトに挑戦 データ×開発力で成果の最大化を

データを使って世の中をよくするために

私が大学時代に取り組んでいた研究は、音響工学というとてもユニークなものでした。音は、人の頭や耳の形によって聞こえ方が変わるのですが、それを耳の形状に合わせて個人化するという研究をしていました。社会での活用イメージとしては、例えば駅構内のアナウンス。よく日本語以外にも、英語や中国語など複数の言語で案内がありますよね。通常は順番にアナウンスされますが、地震などの緊急時には、最後の言語で知らせるまでに時間がかかりすぎます。その課題を解決するために、各言語の特性と耳の形状を紐づけて、複数言語を同時にアナウンスしても聞こえるような研究をしていました。
日頃から「世の中をよくする」ためにと考えていたため、「中小企業・ベンチャー企業に寄り添って事業を成長させる」というビジョンを持つソウルドアウトには、すぐに共感しました。面談を進める中で、データサイエンス領域を強化していきたいとも聞き、ここでなら大学時代の経験が活かせると考え、入社しました。

手作業の課題に対し自動で効率化

デジタル広告最大の特長は、施策の実行・効果測定・分析を高速で繰り返しながら、効果を最大化できるところにあります。複数の広告文を同時に展開し、効果の高かったものをさらに改善することで、短期間で効果改善を目指すことができるのです。お客様から出稿のご依頼をいただいた際も一度に複数の広告文を作成していくのが一般的で、商品の訴求ポイントを吟味し、どのようなコピーなら目に止まるのか、売れるのかを検討していきます。
そこで課題となるのが、膨大な広告文を手作業で作成し続けなければいけないということです。多岐に及ぶ広告運用業務の中で多くの時間が割かれており、実際ソウルドアウトのアカウントプランナーやお客様側からもこの業務を効率化したいという声が上がっていました。
この課題に対し、私が開発しているのが「広告文自動生成ツール」です。ソウルドアウトには、今までの運用で蓄積してきた中小企業の膨大なSMB(Small to Medium Business)データがあります。これらのデータを基に、最も興味を引き、クリック率が高まる広告文を自動で生成することを可能にしました。使い方は簡単で、広告文から誘導するランディングページ情報を入力し、広告文に含めたい訴求軸やキーワードなどを設定するだけです。複数の効果的な広告文案を自動生成できます。まだお客様向けの本格的なリリース前ですが、すでに多くの引き合いをいただいており、プロダクトの価値が社内でも認められて2022年上半期にはソウルドアウト新人賞を受賞しました。

ゼロからイチへ未知のAI技術に挑戦

私は現在、この「広告文自動生成ツール」の頭脳となる、AIモデルの開発・改善を行なっています。広告文生成するためには、日本語特有の文字のゆらぎなど、特有の難しさがあるのですが、そこで必要な技術が、近年自然言語処理業界を賑わせている大規模言語モデルです。この技術により、大量のデータを学習し、日本語としてはもちろん広告文として違和感がなく、成果が上がる広告文のモデル化が可能となりますが、開発当初のソウルドアウトでは自然言語処理技術に関する知見は全くありませんでした。
実は、この開発プロジェクトがスタートしたのは、2ヶ月の新入社員研修が終わった直後。ソウルドアウトが持っているデータで何ができるのかを上司と話し合っていたとき、見えてきた課題に対して、「プロジェクトリーダーとして挑戦してみないか?」と打診されたのです。元々、ゼロからイチを立ち上げていくプロジェクトに初期フェーズから携わりたいと思っていましたが、大学院時代の研究データと、ソウルドアウトが扱うデータの属性は全く異なるため、最初は不安でした。それでも開発の流れや、データを分析するために使う技術は変わらないと思い、開発に挑戦することにしました。プロダクトの要件、方向性を上司と話し合い、そこからは広告文自動生成に関する論文を読み漁るなど、手探りで開発にあたりました。ゼロから開発したというのは大きなやりがいでしたし、今もお客様の広告成果を改善、向上させるために様々な機能を追加しています。

自分本位にならず課題起点で開発

プロダクト開発で大切なことは、自分本位にならないことだと思っています。開発というと先に技術ありきで、「この技術なら、これができる」と、どのような課題を解決するのか、価値を提供するのかの議論が飛ばされがちです。その結果、「よさそうなものができたが、一体どれだけの付加価値を生んでいるのか?」、さらに言えば「どれだけの課題を解決し、その対価として収益を生み出せるのかが分からない」などと自己満足で終わるプロダクトになってしまいがちです。ですから、まず最初に課題ベースで開発目的を明確にしなければなりません。「何を解決したいのか?」を、お客様はもちろん、社内からもよく聴くことが大切だと感じています。

組織力で挑むデータ分析力の底上げ

ソウルドアウトにはたくさんのSMBデータがあります。データの利活用や保存方法などについては年々厳しくなっているので、データを「正しく」「安全に」「高度に」活用し、お客様にさらに価値あるサービスをを提供していくことが、自分のミッションだと感じています。目指しているのは、データによるビジネス課題解決のスペシャリスト。私自身が手を動かすことはもちろんですが、今後はデータ分析のスペシャリスト組織としてより高度な課題にも挑戦していきたいと考えています。
ソウルドアウトには、私のように入社1年目からでも大きなプロジェクトに挑戦できる社風があります。もちろん重責へのプレッシャーを感じることもありますが、私自身、新卒で、しかも何も実績が無いにもかかわらずプロジェクトマネージャーとしてチームを率いながら「広告文自動生成ツール」を開発できたことは自信につながり、その貴重な経験はキャリアとしても大きな財産になりました。今後も、挑戦し続けることを忘れずにソウルドアウトと自分を成長させていきたいと思います。