Business Story
01
Kohei Shinoka
Atsushi Kuzuya
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執行役員
葛谷 篤志 -
グロースデザイン本部
本部長
新岡 耕平
利益を出しながらサステナブルな循環をつくる中小支援とは
2022年4月1日に博報堂DYグループに加わったソウルドアウト株式会社は、2009年の創業時より一貫して、地方を含む日本全国の中小・ベンチャー企業の支援に取り組んでいます。当時は今と比べてインターネット広告への理解も進んでいない上に、潤沢な予算がないケースも多く、ビジネスとして軌道に乗せるには茨の道でした。ソウルドアウトの創業メンバーであるマーケティングカンパニー執行役員の葛谷 篤志と、グロースデザイン本部の新岡 耕平に、ソウルドアウトの歩みとこれからについて聞きました。
※所属・役職は2023年2月時点のものとなります。
Story 01
少ない予算でいかに利益を出すかが求められる、地方の中小・ベンチャー企業支援
──まず、ソウルドアウトのメイン事業であるSMB(Small to Medium Business:中小企業)領域のデジタル支援について、葛谷さんは主にどのようなことに取り組んできたのか教えてください。
葛谷ソウルドアウトは2009年にオプト(現:デジタルホールディングス)から社内ベンチャーとして生まれました。設立時から今も変わらない根幹事業が「中小企業支援」です。創業期から私は地方営業所の立ち上げを担っており、2011年に埼玉、横浜、新潟、静岡と4拠点の営業所を設立しました。当時は人手も足りなかったので、営業所といっても1人の担当者が駐在しているだけの小さな拠点でした。そして、2011年は現在と比べてもインターネット広告が日本全国に普及しておらず、大手のお客様といえども初回は高くて月額30〜40万円程度の広告費用からチャレンジするのが通例でした。
──主にどのようなお客様がいたのでしょうか。
葛谷当時は、金融、不動産、人材、学校など地域に根ざした企業から、全国に販路をもつ企業と様々な業種・業態の企業様とお取引をさせていただきました。まだまだ、地方企業様にとってデジタルマーケティングは浸透しておらず、月額で10万円からのお取引を重ねていました。
私が新潟の営業所を設立したのが12年前の2011年ですが、その頃からいまだにお付き合いを頂いている企業もたくさんおります。現在では、当時のお取引金額から10倍/20倍の企業様も多数存在しておりますし、地方の上場企業様も同様に、一緒に成長をさせて頂いた実感があります。
──地方にある大手のお客様でも少額からのスタートだったんですね。薄利多売モデルの難しさについて教えてください。
葛谷基本的にインターネット広告はマージン(手数料)で収益を得るビジネスなので、例えば月額10万の予算でYahoo!やGoogleの広告枠をお客様に提供すると、その10〜20%、つまり1〜2万円が我々の利益となります。月額の予算がそこまで大きくないお客様の支援については、人件費を考えると投入できるコストが限定されてしまいます。どうしても薄利多売のビジネスになってしまうので、全体のお客様数を増やさなければビジネスとして成立させることは極めて困難です。
中小機構(※1)さんや地方銀行さんと連携して、各地の中小企業を支援する取り組みも続けてはきましたが、そこに拡張性を見出すことができずに、途中で断念せざるを得ないケースもありました。
(※1)正式名称は「中小企業基盤整備機構」。企業の成長ステージに合わせた幅広い支援を行う独立行政法人。
Story 02
苦戦が続く中、コロナ禍が与えた転機とは
──2020年からはコロナ禍の影響で、人々のリアルな対面が制限されるようになりました。これにより、デジタル広告はどのような影響がありましたか?
葛谷大きく変わったのが、地方企業もデジタルに触れざるを得なくなったことです。Zoomなどのオンライン会議ツールが台頭してきたことで、人々が移動して対面で会話することがもはや標準モードではなくなりました。地方の中小・ベンチャー企業もデジタルへのシフトチェンジを余儀なくされたことで、我々が支援してきたデジタルマーケティング手法が一気に浸透した感覚はありました。
それまでは、外部からやって来た黒船的な印象だったデジタルマーケティングに対して、距離を取っていた企業も少なくありませんでした。しかし、コロナ禍を経て、自分たちから引き寄せて利用しなければいけないものに変わったんです。中小企業のデジタルに対する理解が進んだことは、我々にとって追い風となりました。
Story 03
広告自動化ツールの導入で作業時間が1/10に
──続いて新岡さんに伺います。新岡さんは主にどういった観点でSMB領域のデジタル支援に取り組んでいるのでしょうか?
新岡私は主に、広告運用を自動化するツールを活用した中小企業支援に取り組んでいます。葛谷の話にもありましたが、SMB領域の支援はどうしても薄利多売のビジネスモデルになってしまうので継続的にご支援するのが難しく、会社としても一時的に規模を縮小させた時期がありました。そんな中、コロナ禍の2020年に私から「このタイミングで再度、SMB領域の支援を拡充させたい」と会社に提言をしました。
新岡が実際に作成したプレゼン資料の表紙
──直談判ですか。
新岡はい。私自身も地方を盛り上げたいという思いを持って入社しましたので、その想いを代表の荒波や経営陣にぶつけてみたんです。2020年はコロナ禍でデジタルを導入する気運が高まり、広告運用に対するテクノロジーも発展してきたので、そこから再度、会社としてSMB支援に注力するようになりました。
──自動化ツールを使うことで、どのようなメリットがあるのでしょうか?
新岡広告運用を自動化するツールを利用することで、それまで100時間を要していた作業が1/10の時間でできるようになりました。もちろん、広告運用のスキルに長けた人間と比べたら精度は劣りますが、それでも大きな変革です。
インターネット広告は「運用型広告」とも呼ばれているように、人の手によるメンテナンスが必要になってきます。お客様一社一社で見ると、そこまで大きな作業量ではありませんが、ビジネスとして継続させるにはある程度のボリュームで対応しなければいけません。そうなると人手も必要になってきますが、自動化ツールを活用することで大きな省力化が可能になりました。
Story 04
1人あたりの担当お客様数も3~4倍に
──運用型広告について、具体的にどのような作業が発生するのでしょうか?
新岡運用型広告の大きな特徴として挙げられるのが、すべての結果が数字として見えてしまうことです。そこが利点であり、運用する難しさでもあります。どれだけ広告が配信されているのか? どれくらいの問い合わせがきているのか? それらすべてが数値として可視化されます。しかもリアルタイムなので、毎日、もっと言えば毎時間ごとの改善が必要になってくるんです。極端な話、お客様一社につき、丸一日担当者が張り付いて作業するくらい手をかけられます。それが強みでもあり、悩みどころでもあります。
──自動化ツールの導入で、作業の省力化はどの程度進みましたか?
新岡これまでのインターネット広告の運用においては、1人あたり10〜15社が限界でしたが、ツールの導入により3〜4倍に拡大されました。1人でも40〜50社のお客様を担当することが可能です。
Story 05
博報堂DYグループのネットワークを活かし、全国の中小企業を支援
──2022年4月1日に博報堂DYグループの一員となりました。これによりどんな変化が生じましたか?
葛谷中小・ベンチャー企業の皆さまのニーズがデジタルマーケティング支援以外であった場合にも、私たちが提供できるサービスが広がりました。例えば、採用など人材面でのサポートや、インターネット広告ではない通常の看板や交通広告についての相談もお受けできるようになりました。これまではデジタルという視点でのサポートがメインでしたが、あらためて中小企業が求めるニーズに対して幅広く支援ができる会社に代わりつつあります。
もちろんインターネット広告に対しても、テクノロジーに精通したエンジニアを増強して、これまで以上にご支援ができる体制を整えています。博報堂DYグループと連携したことで、あらためて私たちがやりたかった地方の中小企業支援に集中しやすくなりました。まだ道半ばではありますが、これからはより理念にフォーカスした事業展開を進めていきます。
Story 06
デジタルマーケティング業界は、実は理系学生が活躍できる場所
──新岡さんも理系出身とお聞きしました。データやテクノロジーを活用して何が具体的にできるようになるのでしょうか。
新岡テクノロジーを活用することで、大きく「今までの作業の省力化」と「新しい発見」ができると思っています。
前者に関しては、テクノロジー活用の例としてイメージが付きやすいのは、Excelの集計のような単純作業を自動化することで、効率化が進むことは分かりやすいと思います。個人的には後者のほうが重要だと思っていて、効率化によって生み出された時間をさらなる「投資」に回すことで、さらなるビジネスチャンスをつかめると思っています。
昨今のテクノロジーの進化は目を見張るものがあり、1年前の当たり前は当たり前じゃないことがこの業界では日常茶飯事です。 テクノロジーに対して、正しく理解をし、柔軟に解釈、活用できる人材が求められていくと思いますし、理系出身の学生には活躍の場が今後増えていくと思っています。